絵

稽古中、私は思い付きをよく口にする。
これまでと方向性も毛色も違ったことを言われると、聞かされる方は困るしかないだろうが、私もただ思い付いたことを口にしているわけではない。
役者の活動を見ていて、自分のイメージと離れた時、より面白く見せられるように演出を考え直した末の思い付きなのだ。(思い付きには変わりないのだが)

以前、伽藍博物堂の佐藤さんと話していたことを思い出した。
「私は自分の描いた絵と稽古中に見える絵を見比べて、稽古場でまた新しい絵を作っていく。」
私もその考えに強く同意していた。

栗山民也の著書に
稽古場で生まれる偶然を拾い上げる
といった内容が書かれていたが、正にその通りだと思う。
一人でいる時間があると、私はすぐに自分の絵を描き進めるが、その絵も稽古場では捨てるようにしている。
役者たちが持って来た絵と正面から向き合い、稽古場で新しい絵を描くためである。

私から思い付きを話された役者、スタッフには気の毒だが、こう言うしかない。

そうゆうもんだよ


【役者を待ちながら:山城】